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校長記事‐根の深い木 3‐

カナダ・トロント ノースヨークセントラルアカデミー ブログ

伝言ゲームという面白い遊びがありますが、人から聞いたことをそのまま再現するのは、とてもむずかしことです。また、その場で物事をあるがままに伝えると言うのは立派なスキルだと思います。

その昔、稗田阿礼という記憶力の神様のような語り部が太安万侶に語って、それを書き起こしたのが「古事記」と言われています。

文字のない時代は口伝だったんですね。話すことによって伝承されていたわけです。

歴史の記憶を保存するために、それをいつでも再現して人々に伝えることができる人がいたってところがすごいです。話すことは読むことより易しいように感じますが、メールで議論するよりディベートの方がその人の考える力が発揮されているような気がします。ライブは力量がモノを言います。

人は他人の話を聞くのは読書ほど有益ではないと考えているのかもしれませんが、本を読むよりおしゃべりをした方が新しいアイデアが湧くのかもしれません。もちろんこの場合も、語彙力が大切なのは言うまでもありません。

例えば画材店に行くと、絵の具の種類の多さに驚きます。そのそれぞれに色としての名前が付いています。色の名前を知らなかったら、きっと微妙な色の違いを見分けることができないかもしれません。

違いのわかりにくい色がたくさん隣り合っているとき、違いがわかる人と判らない人がいると言うことです。普通の人にとっては微妙な違いでしかない感覚も色の名前を知っていることで明確に見分けられるわけです。色の名前を語彙と捉えると語彙数の多さが重要だと気づきます。

私たちには同じ色に見えてしまうこともはっきりとわかるのは色に名前がついているからなのですね。

語彙数が少なければぼんやりしてしまうということです。

そう考えると言葉が、人の考えや思いに来たす役割は、かなり大きい気がします。

言語によって少なからず思考や認識に影響が与えられるということですから。

子どもの頃読んだ本に、こんなことが書かれていてハッとしたことがあります。

「ライオンという名前が付けられる前に、ライオンを見た人はどれほど怖ろしかっただろう」。