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校長記事‐根の深い木 10‐

カナダ・トロント ノースヨークセントラルアカデミー ブログ

大学の定員割れが大学生の学力を低下させているという意見はたくさんあります。

では、市場原理を導入し、ビジネスマインドで大学経営をすれば、不要な大学は淘汰され、大学生の質が上がり学力は復活するでしょうか。

小泉内閣時代に構造改革・規制緩和路線の中で「株式会社立大学」が認可されました。

「市場による淘汰に委ねれば、本当に必要な大学だけが生き残るだろう」「市場原理が教育の崩壊を食い止める」というロジックで「株式会社立大学」が2004年からできはじめました。

教育投資が確実に回収できる実学を教える教育機関こそが、非現実的な理想教育にこだわっている旧弊な大学を蹴散らして、市場の勝者となる・・はずでした。

ところが、株式会社立の大学はあっという間に危機的状況に陥りました。

ビジネスマンが作ったLECリーガルマインド大学は2004年に開学、全国14キャンパスを大々的に展開しましたが、まったく学生が集まらず、2009年に定員160名のところに18名しか集まらず募集停止となりました。2006年開学のLCA学院大学も志願者が集まらず2009年に募集停止しました。

株式会社立大学はたちまちのうちに市場から叩き出されてしまいました。

18歳人口の減少で大学経営をめぐる状況は厳しくなっていますから、淘汰される大学が出てきても仕方のない状況にはありました。しかし、経営のノウハウを教える教育機関が経営破綻してしまったのはショックなことでした。教育はビジネスマンが来るべき場ではなかったのでしょうか。

市場は、これほど重大な判断を間違えることがあるのでしょうか。

教育はビジネスではないという人もいますが、少なくとも民間教育は間違いなくビジネスです。成功すれば儲かります。教育は金儲けではないという言い方は、率直に「ビジネス」をやっている方達に失礼ではないでしょうか。ビジネスパーソンは、利益ばかりを求めているのではなく、使命感を持ってやっていらっしゃいます。同じように進学塾はビジネスとして教育を行っています。顧客の切実な要望に応えなければ生き残ることはできません。学校で英語を教えるのも進学塾で英語を教えるのも同じ教育です。貴賎はありません。

大学生の学力低下の原因は「量が拡大していく段階では質は一旦は落ちる」というのが本質ではないでしょうか。これまで、その教育を受けられなかった層が新たに大学に入ってくるのですから、その分だけ平均は下がります。そう考えれば、大学の質を上げるために大学の数を減らそうというのは、論理的であるようで論理的ではないように思います。