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県境‐根の深い木 39‐

経済の分野では、グローバリゼーションは、競争が世界的に拡大していく過程です。そして、競争の中では、国も企業も大きな損失を被る可能性もあります。

歴史を振り返ると、戦争や不景気が保護主義を促し、グローバリゼーションを阻止してきました。20世紀前半には、いろいろな国が関税を引き上げたり、ブロック化を進めたりした結果、世界貿易は停滞しました。多くの国が貿易制限を行い、関税障壁を高めました。現代においても再び自国第一主義から、保護主義を擁護する人々もいます。

「アメリカ第一主義」を掲げて保護主義的な主張を行ったトランプ大統領が誕生したことや、イギリスが国民投票でEUからの離脱を決めるなど、グローバル化の流れに反する政治的な動きも見られました。

多くの人はトランプ大統領の政策は非現実的で、短期間で常識的に修正されるだろうと考えていました。しかし今、トランプ大統領を強く支持し続ける人々が少ないとは思えません。多くの人が、グローバル化すれば、より豊かになれるという理論に納得していないということです。経済のグローバル化の現実はそう単純ではないということです。大きな利益を得る人がいる一方で、所得が低下したり、失業したりする人が出てきます。産業構造が変化していくには時間もかかります。経済の変化が激しくなる中で、優良企業でも短期間のうちに経営が悪化して、大規模なリストラを行わざるをえなくなるということも増えてきました。人々はグローバル化で経済成長が高まり豊かになることを期待しましたが、市場原理が働けば、問題が解決する、と単純に考えるのは無理があります。世界がさまざまな共通の制度を受け入れるまでには、調整に時間がかかるということでしょう。長い年月の間に、言語や習慣、文化や社会制度が均質化して、初めて共有するシステムを運営していくことが可能になるということではないかと思います。

それまでの間は、それぞれの国や地域による差が存在するということを前提にしなければならないのではないかと思います。

ところで、日本には、県境がルールとしてありますが、行き来は自由です。しかし国境には出入りするのに許可が必要な明確な「境」が、存在しています。勝手に越えたら罰せられますから許可証が要ります。国と国の間には国境、言葉、社会制度など数えきれないほどのルールがあるのですから、やはり簡単には共有システムを導入できません。それでもやはり時間をかけて取り組むべきだと考える人の数も多いのです。時間をかけて継続的に推進していくべき課題です。

小論文対策講座をトロントで開講するまで、こういう課題に真剣に取り組む高校生に会ったことがありませんでした。多民族都市からの帰国生に乞うご期待です。