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It never gets easier. You just get better.‐根の深い木 80 ‐

生徒たちと、座右の銘についての話をしている時のことです。あらゆることに才能を発揮している一人の女子中学生に問うたとき、「“It never gets easier. You just get better.”です」と速やかに応えました。意味を訊ねると「簡単に言うと“やる事が容易になるのではなく、あなたが上達するのだ。”という意味らしいのですが」と前置きした上で、「私の解釈はこうです」と次のように教えてくれました。

「決して易しくはならない、自分が上達してさらに上を目指し、高い壁に立ち向かっている限り、上達しながらハードルを上げていくのだから取り組んでいるものが易しくなるということはないということです」とのことでした。“舌を巻く”とは、こういう時に言うのでしょう。彼女は、この言葉を単なる名言として教えられたのではなく、ある時、そう言い諭されたのだと教えてくれました。

彼女は、中2で英検準1級に合格し、ラグビー選手としてもトップレベルのアスリートでした。冗談が好きで、私の拙い英語の発音には、大げさにうんざりした表情をする茶目っ気を見せつつ、いつもクールに(漢字テスト以外は)身につけたことを再現する能力を持つ生徒でした。仲の良い彼女の友人は、同じ中2であるにもかかわらず、4ヶ国語を流暢に駆使し、韓流好きの私には、しばしばサービス精神で韓国語を教えてくれる、とても謙虚な生徒で大変な読書家でした。他にも才気あふれる同学年の生徒たちと同じテーマで議論した時、明確に個性が分かれるので、授業は、いつも大いに活性化します。私は、生徒にはいつも「僕と君たちは、対等です」を持論にしてきましたが、実際はどう見ても、私が子どもたちから教わることの方が多いと、私はちゃんと自覚していました。それにしても14歳というのは野球でも水泳でもゴルフでもスケートでも、はたまたテニスでも、将棋でもバレエでもピアノでもバイオリンでも、その他のアーティストでも才能開花の年齢なのでしょうか。なんであれ14歳の時に突き抜けたものがあるならば、応援したいといつも思っています。私たち教師は、到底、「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」などと、上目線で発言できるはずがありません。

ところで、この「It never gets easier. You just get better.」は、解釈が聞き手の状況次第で、変化するのでしょうが、努力する人に向けては、とても言い得た名言だと感動します。

名言や格言は、多くの場合、言葉を愛する大人が、単に表現として、愛(め)で、標語として壁に貼ったり、日めくりにしてぶら下げたりします。自分の頭で考えて腑に落とし、行動し、信念として取り組むことで、単なる表現としてではなく、生き方の本質に関わる認識にすることなんてなかなかできません。むしろ中学生だからこそ、力強くしなやかに本気で取り組むのでしょう。修辞学として、単に装飾や美化のためのものとして名言を扱わずに、実践的な目的とすることが素晴らしいことです。意識的に用いるのでなく、それを日常にするということです。

「やることが容易になるのではなく、あなたが上達するのだ」