· 

外国で働く‐根の深い木 81 ‐

海外で立ち上げた会社ですから私たちは、“外国人”です。ですから、まず認可を取らなくてはなりませんでした。これがなかなか大変でした。開業認可取得の際は政府に詳細を説明するのですが、教室設備のハードルの高さは、日本では想像もつかないものでした。更に “日本式の教育を理解してもらうのにずいぶん苦労しました。ワークパーミット取得についても大変な種類の書類提出が必要でしたし、取得期間の幅が数ヶ月、半年、1年と延長され続けたりしました。私たちは運が悪いのだろうかと悩んだりもしましたが、考えてみれば、外国人が会社を設立するというのですから認可に厳しいのは当然です。日本にずっと住んで、経済活動をし、納税し、保障を受け、居住を許されているという、母国での生活の当たり前さに慣れて、他人の家の軒先を借りて仕事をするというもっとも基本的なことを忘れていました。日本以外の国に行けば、日本人として、外国人として、社会人として、国際人として常に謙虚に恥ずかしくない態度で暮らすことが最も重要だということを改めて認識する機会になりました。しかし、これらの苦労は、この地でのやりがいに比べたら、何でもないことです。

翻って子どもたちの受験する帰国生入試について、まずその意義を考えてみますと、受け入れる学校は、日本で得られるものとは異なった能力を海外の教育で身に付けてきた生徒を入学させ、国内学校出身者へ刺激を与え、教育的効果の向上を図ることにあると言えるでしょう。何をいかに学び、ユニークな資質や能力をどのように身に付けてきたか、単に日英両語で読み書きができるというだけでなく、日本以外の国での社会生活習慣も身につけ、国際性を将来に活かすことができます。もちろん外国語能力や国際的感覚だけではなく、望ましい生活習慣として、自己表明、自立心、積極性、率直性、明朗性、奉仕の精神などは、日本の学校教育の中では指導が難しい部分であり、帰国子女の特性として、高く評価されてよいものです。これらは、「生きる力」として、具体的な能力や生活習慣とみなされるべきものだと思います。現地校で身に付けた意見発表・レポート作成・プレゼンテーションなどの能力は、小学校から高校まで、かなり高いレベルですから当然、期待されます。ですから、帰国子女の受け入れにあたっては、熱心な学校は海外での広報に努力し、海外で行われる学校説明会に出向いて来ていらっしゃいます。私たちNYCAも日本から出張していただき説明会を行っています。学校(特に私立校)は少子化の影響を大きく受けており、学校運営のためにも、特徴のある教育を行う必要があります。その教育に合う新入生を獲得するのが、海外入試を含めた帰国子女のための入試ですし、それぞれの学校で出願書類や面接などに工夫を凝らしていらっしゃいます。中でも面接時の質問に対する回答は、重要な判定資料となるはずです。日常生活についての質問は、書類ではあまり知ることのできない貴重な情報だからです。帰国生の多くは「正解探し」をしません。自分の思い、理由を、自分の言葉で述べようとします。もちろん「日本語で、大人の質問にしっかりと答える」経験がまったくないので、面接の練習は欠かせません。そのために私たちは毎日、生徒たちの到着とともに日本語シャワーを浴びせることを心がけています。この子たちが世界で活躍するようになる日を想像すると、立ち上げの苦労は些細なことに思われます。