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入試問題の方向性‐根の深い木 88 ‐

首都圏には現在20校を超える公立中高一貫校があります。中高6年一貫教育は、私学十八番(おはこ)のシステムでした。そのメリットをわかってはいてもコスト面など様々な理由で中学受験に踏み切れなかったご家庭にとって、公立一貫校の開校は朗報だったに違いありません。共学であることや難関大学合格実績の高さでも人気を集め、さらに私立中学受験者にとっても公立一貫校との併願パターンも組み込むことができるのですから中学受験は「公私」共に活性化します。相乗的に新しい入試スタイルも導入されつつあります。公立一貫校は適性検査型入試を行っていますが、首都圏の私立中学でもこれを導入するところが増えています(2019年には147校が適性検査型入試を導入しています)。名称は「思考力入試」「PISA型入試」「総合型入試」「プレゼンテーション型入試」「基礎学力型入試」など、それぞれの学校のコンセプト毎に異なりますが、公立中高一貫校向けの準備をしてきた受験生にとっては、併願しやすくなることでしょう。
2020
年の大学入試改革で求められている「思考力・判断力・表現力」を求める学力観と、中高一貫校の「適性検査型入試」で求める学力には相通じるものがあります。「自分の身の回りのことに関心を持ち、問題点を発見し、自分なりの解決策を考え、さらにそれを周りの人に伝える力を備える」ことに対応して行くのは、将来の大学入試や社会で求められる力を育むための良い契機になります。科目を問わず資料やグラフから必要な情報を読み取り、理由をグラフのデータと関連させて説明するタイプの問題などは、従来の私立中学入試とは大きく異なります。パターン学習で解法を覚えるという学習方法では合格できない形式の問題なのです。ちなみに公立中高一貫校の「適性検査」では、一般的に「理系」「文系」の2科で行われます。 「理系」は、算数・理科的な問題でありつつ、「周りの人に伝えるコミュニケーション能力」を試され、考え方・解き方を説明する「記述力」も必要になります。

こうしたタイプの問題では文章や資料の「読解力」と「分析力」を問われるので、日ごろから考える習慣がついていなければ、対応できません。従来型の入試では、定員通りの合格者数をコントロールするためにも正解は一つでなければなりませんでした。しかし、今後は学力の「質」で選抜していくには、中学受験の段階から適性検査型にしていく学校が増えても不思議ではありません。

大学入試と日本の教育が大きく変わろうとする節目に、受験学習一辺倒ではなく音楽、芸術、スポーツ、英会話など多様な習い事を通して体験を積んできた子どもたちが受験していける入試形態として進化して行くのならばこれは実に素晴らしいことだと思います。