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文武両道‐根の深い木 96 ‐

日本では、これまで私立中学を含め、難関校志願者のスポーツ参加率は、かなり低かったように思います。中2になると、部活と勉強のどちらを選択するべきかと自問自答する生徒もたくさんいました。中学受験専門塾では、小5の2学期あたりに、「そろそろお稽古ごとの整理を」とやんわりと受験学習に専念させるように誘導していました。合格のためには、少しでも指導時間を確保したいというのが、本音でした。

2年前に、甲子園出場の野球部監督が「文武両道などあり得ない」「文武両道は二流だ」という内容の発言をして物議を醸したことがありました。文武両道の定義が、議論参加者によって、違っていたのかもしれませんが、勉強ができるトップアスリートはたくさんいることも事実です。私たちは、本人がスポーツ好きならば両立を選択してほしいと考えていますし、心から応援しています。大会出場を優先された場合は、必ず、振替授業を行っています。進学塾教師は、建前として「どちらも応援します」と言いがちですが、指導成果を出して、ご家庭の不安を払拭することが、真の応援だと思っています。

ところで、トロントは、ウィンタースポーツが盛んですし、ジムやフィットネスもたくさんあります。スタジアムだけでなくスポーツバーでの観戦など、1年を通してスポーツが日常に浸透しています。また、それに合わせるかのように、スポーツウェア愛好家が多く、着こなしも洗練されています。MLBのキャップやTシャツだけでなく、NHLNBAのレプリカウェアもとても人気があります。街を歩いていても全身からスポーツ感満載で、ジムから今出てきたかのような格好をよく見かけます。子どもたちも、スポーツウェアを普段着にしていて、本格的なスポーツブランドのウェアやシューズを品よくコーディネートしています。綺麗なデザインのものを実にカッコよく着こなしているのです。スポーツウェアを着て、真剣に授業を受ける生徒たちを毎日興味深く見ていた私は、やっとアスレジャー(athleticleisure=athleisure)という言葉とその概念を知りました。数年前までの普段着としてのスポーツウェアは、着心地とリラックス感だけを優先して、お洒落とは逆方向で、ルーズな人に見えがちでした。スポーツをやっている雰囲気のない人が、楽チンなウェアとしてジャージーで買い物に行ったり、パジャマ代わりにしたりというイメージでした。ところが、今は大人も小中学生も高校生もファッショナブルを重視して、スポーツウェアを肩肘張らずにファッションとして楽しんでいます。私たちも小学生との会話でアディダス派かナイキ派か、はたまたアンダーアーマー派かで盛り上がります。アスレジャーは、活発な子どもたちには、最適なファッションです。スポーツ好きのアスレジャーのオシャレ度はレベルが高く、子どもたちの着こなしは堂に入っています。彼らに私の小中学生の頃の写真を見せたら「先生は何時代の人ですか?」と言われそうです。

スポーツを日常に取り入れているアスレジャーに身を包んだ受験生は、かなりカッコイイです。スポーツを楽しみ、本を読み、偏りなく食生活を送る文武両道はとても健康的な発想です。